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YUKI「プレイボール / 坂道のメロディ」

 

 太ももエロし。

 

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 久しぶりのシングル記事にして、2年以上前のYUKIのシングル「プレイボール / 坂道のメロディ」のお話です。何故今頃このシングルかと言いますと、まあまず本当に大好きな1枚であることは当然として、決め手となったのは、このシングルは両A面でありながら、今月17日に発売される新作『FLY』にはどちらも収録されないというドSな公式アナウンスがあったからです。後者の「坂道のメロディ」はアルバム・ヴァージョンとして収録されるんですが、このシングル・ヴァージョンには並々ならぬ思い入れがあるので、ええいこの際書いてやれ! と思い立ったわけです。ちょっぴりおセンチな日にはピッタリな1枚だと思いますしね……はい、わたくしただいまちょっぴりおセンチゆえに、ちょっといつもとは違った感想になると思いますが、それもまた味として楽しんでいただけると幸いです。

 

 さて、M1「プレイボール」はソロ・デビュー10周年を迎えたYUKIが東京ドーム公演を目前にして作られたという1曲で、アニヴァーサリー的な意味合いが込められています。それもあってアルバム収録は見送られたのかな、と思ってるんですが、これがすごい名曲なんですね。イントロの最初の一音から、風の吹く緑のグラウンドを芝生を散らしながら思い切り駆け出す主人公の絵が思い浮かびます。こういう情景をパッと思い浮かばせるのってきっと容易じゃないと思うんですね。それをイントロだけでやってのける時点で、もはや名曲の予感しかしないんです。

 そして注目すべきは歌詞で、この曲はAメロ・Bメロ・サビで章がきちんと分かれていて、すごくわかりやすいんです。主人公の恋愛を野球に喩えて歌った歌詞なんですが、章の終わりがきちんと次の章へのきっかけを残しているんですね。例えば1番のAメロは"靴ひも千切れ"で聴き手にどうしたの? と思わせた次の瞬間にBメロで"まさかの急展開よ"と歌い出します。そしてBメロの終わり(つまりサビ前のフレーズ)は"彼女の笑い声 あなたの低い声"で、どうなるの? どうなっちゃうの? と思わせて主題(サビ)に突入します。そしてそのサビが野球をモチーフにしているので、曲のテーマが捉えやすいんですね。恋愛を野球の試合に喩えて歌う手法には、聴き手の曲への理解をより深める効果があります。ですので聴き手は主人公の状況を把握できるんですね。歌詞の内容を聴き手に把握させるのって、何気にすごく難しいことだと思うんです。そこに作詞家としてのYUKIの才能を感じずにはいられません。そしてこの曲はサビのキメのフレーズが必ず"どうやら"で始まるんですね。同じフレーズを使うことで対比させることで、聴き手は曲のなかのドラマの動きを追うことができるんです。特にサビのキメなので、どうなるの? どうなっちゃうの? とドキドキしながらそこを待って、最後まで聴いて、ああ~とその結末に思わず息をついてしまいます。何より恋愛に揺れてそれでもひたむきにがむしゃらに頑張ろうとする主人公の心情が、日常、野球と見事に調和していて、思わず主人公を応援したくなるんですね。特にサビはリズム隊がヤキモキした主人公の地団駄を表しているかのようで、もうアンタこのあと思いっきりベソかいてもいいわよ! アンタ頑張ったわよ! って励ましてあげたくなります。若干自分の姿にも重なって思いっきり感情移入してしまいますし、本当に素晴らしいです。

 曲もどこまでもポップでキャッチーに作られていて、野球がテーマなだけあって、スポーティーでアップ・テンポ。2番ではマウンドに吹く風の音まで挿入されていて、遊び心も満載です。そして何気に2番のサビにアルバムのタイトルが潜んでいたんですね。ここは意図していたのかどうかわかりませんが、これが伏線だったら恐ろしいな~と思ってしまいます。

 

 はい、M2「坂道のメロディ」ですが、実はコチラが本題だったりします。私、YUKIと言えばジュディマリの人、MV(特に「the end of shite」「メランコリニスタ」)がエロい人っていう印象しかなかったんですが、この曲で一気にファンになったんですね。彼女の40を超えてもなおいっそう増していくキュートさ、生々しさ、ロリータさ、エロさ、ファンタジックさ、舌っ足らずさ……そういった魅力がギュッと凝縮されたのがこの「坂道のメロディ」だと思うんです。まず作曲がアニソン・CMソング界のGODDESS菅野よう子なんですね。そもそもなんでこの曲を知ったかっていうと、この曲ってノイタミナ枠で放送されたアニメ『坂道のアポロン』のOPテーマだったんですね。そもそもこのアニメ『坂道のアポロン』が名作で、私の地元長崎が舞台っていうのもあるんですけど、昭和・ジャズ・高校生という惹かれる人は大いに惹かれるテーマの群像劇で、横浜のいろんな意味で繊細で卑屈なクラシック・ピアノ少年:西見薫が、長崎に転校して出会ったクリスチャンの不良ジャズ・ドラマー:川渕千太郎をはじめとする長崎の人々と関わっていくにつれ互いに成長していき――みたいな話で、もう私の心の琴線を触りに触ってくれちゃったんですね。そして、このアニメのレトロさ・セピアさに主題歌をつけるとしたら、私はYUKIという人選が本当にベストだったと思うんです(もちろんEDテーマの秦基博の「アルタイル」も彼の繊細な歌声とアニメの繊細さが絶妙にマッチした大名曲です)。だってYUKIが10代だったのは30年くらい前。レトロでセピアな思い出なはずなのに、彼女は40代の今になっても10代の少女のような瑞々しさを保っていて、そんな人彼女以外にいないでしょっていう。菅野よう子もこの曲を作るにあたって彼女のライヴに足を運んだんですが、彼女が楽しい衝動を抑えきれず、待ち切れずすぐに動き出してしまうサマにひどく感動して、ライヴが終わる前にこの曲が出来上がっていたという逸話が存在するほどです。しかしそれをそのまま音に落とし込むなんて、流石はGODDESSです。Aメロを奏でる軽やかなイントロ、トランペット、跳ねる導入、どこかノスタルジーな歌の始まり――なんだかこの感じ、松任谷由実の曲の世界観に通ずるものがあるなって思うんですよね、特にBメロがジブリ作品のようで。そしてサビに向かってドラムの音が大きくなってくるんですけど、聴き手も走り出したくてたまらなくて、顔を動かしてリズムを取ってしまうこと必至。YUKIの歌声も"ねぇ"とそわそわウキウキとした感じで話しかけてきて、こちらもワクワクと急かされて、動き出したくてたまらなくなってしまいます。確実にこの曲の素晴らしい部分のひとつだと思いますし、ここまで"ねぇ"というフレーズが似合うアーティストはYUKI以外いないんじゃないでしょうか。そしてサビに入った瞬間、この曲の名脇役であるストリングスが一陣の風のように突き抜けて、その勢いと伸びっぷりに、こちらの気持ちも思わず一緒に飛び出してしまいます。私は毎回ここでわけもなく泣いてしまいます。もう戻ることのない時代を懐かしんでるのか、この曲があまりに眩しすぎるのか、いろんな理由が思い浮かんでこれだと明言することがもはやできません。それくらい多くの感情がせめぎ合ってしまう曲です。そしてその感情はサビの後半の"行かないで"で堰を切るんですね。アニメを観ていると余計内容とリンクしてしまって胸が締めつけられてしまうんですが、それを抜きにしても、またたく間に駆けていく青春を惜しむ感情だったり、自分を突き動かす大切な人に離れてほしくない感情だったり、そんな感情が一気に押し寄せてきて、サビのキメである"メロディは 恋みたいだ"は胸を押さえて両目から涙を流して笑顔を浮かべているというか、そんな状態になってしまいます。なんだか情緒不安定な人みたいになってますが、ホントにそんな感じになるんです。特にこのキメのフレーズはとんだ名フレーズだと思っていて、"メロディは"の部分でトランペットが鳴り出して、そのあとの"恋みたいだ"がよりいっそう晴れ渡る青空のような爽やかさをもって聴き手の心を浄化してくれるんですよね。そして名脇役ストリングス隊の演奏は2番のサビから神憑ったものになっていて、風のように突き抜け、海辺の鳥のように伸びていく(しかも途中でつがいになる)のはもちろんですが、"覚めないで"の部分でまるで世界がひらけていくかのような展開を見せるんです。1番よりも澄みきった、どこまでも晴れやかな世界が、海のうえに広がってるんですね。だからこの部分は気づくと笑顔になっています。もう空が綺麗すぎて、風が爽やかすぎて、そして海がまぶしすぎて、自然と顔がほころんでしまうんです。そこからはその感情が風船のようにどんどん膨らんで、気づくと身体いっぱいで歌いだしている大サビに繋がるので、もうホントに素晴らしいとしか言いようがありません。ただただ感動です。ラスサビは前半が1番で後半が新しい歌詞(粋だねぇ)なんですが、新しい歌詞に入る直前の"消えてしまうの"で急かすようなコーラスが幾重にも挿入されていて、余計消える前に追いかけなきゃ、と弾みがつきます。そして〆のフレーズ"このメロディは"で遂に立ち止まります。一生懸命追いかけて、いつの間にかもうずっと遠くを走っているその背中を見つめて、"もう恋みたいだ"と嬉しいんだか悔しいんだか、今までで一番キラキラした表情・声音・オケで最後のフレーズを歌って、歌い終わるやいなや、存分に謳歌した昂ぶりなのか、はたまた悔しさなのか、逆にもう悔いはないのか、YUKI"ああ"と絶叫のような高音を身体全体を使って思いっきりロングトーンで放ちます。最後のほうはもはや"いい"になってるんですが、それもまた"(気持ち)いい"と捉えることもできるのかな、と思います。めいっぱい歌い切って息を吸い込んだ瞬間、それを慌ただしく追いかける青春の足音のようなアウトロで曲が終わり、それはまるで私の耳を左から耳へと駆け抜けていったよう……本当に一瞬の出来事のようです。今の一瞬はなんだったんだろうと、聴き手のほうが"行かないで"と思ってしまうようになり、結果何度もリピートしてしまうという……ホントにこれは、青春の素晴らしさ、刹那さ、儚さがギュッとつまった、ホンモノの名曲なんだと私は思います。

 一気にまくし立てましたが、YUKIの作詞における遊び心はこの曲でも健在で、1番にも2番にもジャズのスタンダード・ナンバー「ララバイ・オブ・バードランド」「いつか王子様が」といった曲名が散りばめられています。そしてこの曲はどちらもアニメで演奏されるという小憎らしさ……もうたまりません……で。実はアニメでこの曲を耳にするようになったころ、私はちょうど大恋愛してたんです。この曲の歌い出し"どうしよう あなたに出逢うまでの私 忘れちゃったわ"がまさにその通りといった感じで、どうしよう私こんなんじゃなかったのに、ってすごく焦ってた時期でもあったんです。しかも私とその大好きな人は週1くらいのペースで喧嘩してて、それがだんだんエスカレートしていって、次第にもう縁を切ろうみたいな話にシフトしていったので、余計に"行かないで"が心に沁みて涙がちょちょぎれるようになったんですね……precious……あ、ちなみに「坂道のメロディ -version FLY-」と題されたアルバムver.では名脇役のストリングス隊が左側で鳴っています。シングルでは右側で鳴っているので、それだけでここまで感じが変わるのね、と感心してしまいました。どれだけ原曲を崩されるかと正直ハラハラしていたんですが、こちらはキラキラ感が減った代わりに音に温かみが出ていて、ヴォーカルもより前面に出ています。同じ曲なのにシングルでは春~夏・少女なイメージだったのが、アルバムver.では秋~冬・大人なイメージになっていて、これでどの季節でもどの歳になっても青春を追いかけられるね、と嬉しくなりました。YUKI自身も、自分の声が持つ少女・大人の二面性のうち少女のほうを際立たせたアレンジのシングルver.をアダルトな雰囲気漂う『FLY』にそのまま入れるのは変だと思ったんじゃないかな。だから等身大の彼女に合った、大人なアレンジにしたんだと思います。結果的にこの曲は2ヴァージョンできたわけですが、逆にそのおかげで青春をコンプリートできた感じがしますね。ふたつでひとつ、その日の気分・季節・年齢によってどちらを聴くもよし、最高じゃないか……ここまで完璧なシナリオを最初から考えていたなら、私はもうYUKIには頭が上がりません。本当にこんな名曲をありがとうございます。

 

 というわけで、私のこの2年はこの1枚があってこそ――いや、逆になかったら今頃廃人だったなって感じなんです。そりゃ思い入れもここまで深くなるし、そりゃアルバムに入らないと知った今記事を書くしかないって突き動かされるはずだよなって自分でも思わず笑ってしまいます。まあそんな私情を抜きにしてもホントにどちらも名曲なので、アルバムには入りませんし、是非とも皆さん一度チェックしていただければこれ幸いです! それでは!(私のこの拙い感想記事も、最初の更新と今回の追記のふたつでひとつの完成形になってればいいな……)

 

 

 14/09/05

 14/10/16 追記

 今だにこれを超えるシングルに出会えてない……