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UKI EYE『C'est La Vie』

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UKI EYE『C'est La Vie』

 2021年1月11日でデビュー10周年を迎えたUKI EYEが、2021年1月29日に約10年振りとなる待望の2ndアルバム『C'est La Vie』をリリースした。ちなみに、筆者がアルバム感想記事を書くのも約7年振りである。最初は書くつもりなどなかったが、改めて通して聴いた際に涙してしまったこと、そしてネガティブなワードばかりが目につく昨今、できることならポジティブなワードを広げていきたいという気持ちで、いちリスナーとしてこのアルバムの感想を書き綴ることとした。

 

 

はじめに

 まず、本稿を読むにあたってUKI EYE本人のインタビューをご覧いただきたい。

 

 

 以上を踏まえた上で、各曲ごとに感じたことを記していく。

 

素晴らしきこの人生 (La Bella Vita)

 軽やかなワルツ調で始まるこの曲は、ほがらかな天気の日の散歩や、スーパーへ買い物に出かける際、そして退勤して会社を出た瞬間のBGMに相応しいと感じた。これらに共通するのは、解放された瞬間。これからはじまる自由時間をどう過ごそうーーせっかくだったら"おかしみ"のあるものにしたい。だからこそ、煩わしい上司や、使いすぎたカードの利用明細書、クソリプなど"おかしみ"を一切感じないものに対しては《かまけてらんないの、邪魔しないでちょうだい》とNOを突きつける。

 一見ルーティン化しているような毎日でも、人生に特別大きなイベントが起きなくても、日々の小さな"おかしみ"の繰り返しこそが素晴らしい。そう高らかに宣言しているような、思い切りのいい曲だと感じた。

 

Tiny Cute Assassin

 ピッチやリズムの修正に執着していなさそうな、ライブ録音のようなボーカル。モチーフとなっているPENTAGONジンホが"口から音源"と称賛されているのを意識しているのかもしれない。

 タイトルを歌い重ねるたびに相手への感情が"高まり"を遂げていくのが面白い。以下、UKI EYEがモチーフにしたと思われる画像。

 

Hot Guy [album ver.]

 原曲は『Men's Health』の表紙を見てPENTAGONホンソクに一目惚れした瞬間を切り取っているが、本作においてはアルバムにストーリー性を持たせるためか、その輪郭をぼやけさせ、筋肉質な人すべてを対象にしている感じがする。

 

<参考>『Men's Health』(1度目の表紙)

 

Quick Quick

 Hot Guyにセックスを急かしている、とアルバムを聴いた誰もが理解できる流れ。もはやどの音階なのかわからないレベルの低音トラックが、主人公の精神状態がドン底にあることを表現しているように思える。

 

Living Art [album mix]

 怒っている。原曲より確実に、ピアノが怒っている。怒りのエネルギーで前に進み、事態を好転させようとする圧倒的なパワーを感じる。

 ここまでの曲はマイナー調で、これ以降の曲はすべてメジャー調に揃えられているが、ストーリー性を持たせるための作為的なものを感じる。

 

チョコレート・ボーイ (Chocolate Boy) [album ver.]

 何故「Hot Guy」の対象に匿名性を持たせていたかが、この曲でわかった気がする。UKI EYEは、主人公が誇りを取り戻してはじめて、ホンソクと出会えるストーリーにしたかったのだと思う。

 

#このおバカさんに恋してる (#InLoveWithThisFunnyFool) [album ver.]

 これまでのストーリーを見る限り、主人公は複数の人間と身体の関係を持っている。しかしこの曲で《あなたが初めてだったの、何もかも》と歌っているのは、これが本当の初恋(=『Truly, My First Love』)であると示したかったのかもしれない。

 

セグウェイに乗って (On This Segway) [album ver.]

 アルバム前半の終わりを告げる曲。曲中ほとんどの瞬間で鳴っているミの音(転調後はファ)は、セグウェイを走行しているときに景色として流れていく車線境界線を音で表現しているように思える。

 

追い風よ (Dear Favorable Wind)

 アルバム後半の始まりを告げる曲。セグウェイに乗って向かい風を切りながらホンソクの《なびく後ろ髪が愛しくて》と歌っていた主人公に追い風が吹いて《前髪が揺れている》と歌う対比。冒頭歌い出しの瞬間から、ただならぬ緊張感に背筋が伸びる。

 《どこまでも行こう》《ふたりきり》と歌っていたのに、この曲では相手が《遠くの空の下に》いることになっている。何が起きたかはわからないが、そう考えると「セグウェイに乗って」の最後の《Ha-ah》の部分が、まるで美しい思い出の走馬灯のように、とてつもなく切ないものだったかのように思えてくる。

 話を戻そう。この曲は、死んだと思っていた心がまだ生きていたという、希望の歌だと感じる。やはり、セグウェイに乗ったあとに"心が死ぬような何か"が主人公に起きたのだろう。実際、人生においてたびたび直面する"嵐"が、曲の中盤に登場する。《許そうもう全部捨ててしまおう》と歌った直後に《それでも新しくもがいてもがいて生きていこう》と歌っているのは、いくら心を整えたところで、生きている限りそれをかき乱すことが必ず起こり続けることを示唆していると思われる。そしてこの部分の歌唱は、その嵐を"自力で"乗り越えようとしているように聞こえる。

 実際のところ、人生において直面する問題をひとりで乗り越えるというのはとてつもなくしんどい。だからこそ、主人公は追い風に手助けをしてほしいと歌っているのであろう。その追い風とは、インタビューで言及されている藤井風をはじめとする音楽や、PENTAGONをはじめとする推したち、そして愛しいBITCHたちのことであろう。

 

MY PRIDE [album ver.]

 PENTAGONへの"FAN"ソングであり、且つ愛しいBITCHたちとの"FUN"ソングであると定義づけられているが、日本と韓国という遠距離の関係性が、期せずして自粛中に会えない人たちの関係性とリンクしてしまった曲。(その点でいうと「#このおバカさんに恋してる」も《何ヶ月会えなくても大丈夫/ディスプレイ越しのスマイルありがとう》の部分が該当するかもしれない) 更にゲイ・プライドという面でも重なる部分があり、アルバム中最もさまざまな要素が混ざりあった曲であると言っていいだろう。

 この曲と「照らすよ」があることで、「セグウェイに乗って」で切なく終わっていた(と勝手に思っている)物語も、無事ハッピーエンドを迎えたことが伺える。だからこそ、バッドエンドを迎える「𝓗」は本作には未収録となったのだろう。

 

 最後のゴスペル部分はUNIVERSE(PENTAGONのファンの呼称)を表現しているとのことだが、いろいろなことを経て遂に集結したBITCHたちによる、さながら「Just Stand Up!」のような"とっておきの瞬間"のために作られたフレーズでもあるのかもしれない。

 

照らすよ (Light You Up)

 こんなにもどかしい曲があっていいのだろうか?サビで「ドレミファソラシ」まで行くのに、最後ドに着地せずに転調するという焦れったさといったら!そしてそのもどかしさや焦れったさは、歌詞にも表れている。

 この曲も「MY PRIDE」と同じくPENTAGONへの"FAN"ソングと愛しいBITCHたちとの"FUN"ソングの両方の役割を担っているとのことだが、筆者にはそれが共存しているというより、二部構成となっている気がする。

 まず、PENTAGONへの"FAN"ソング部分。コロナ禍においてアーティストとファンは直接会うことがかなわなくなり、今でもその状況が続いている。ことさらK-POP男子アイドルに関しては、このタイミングで入隊するというケースもある。

 1番Aメロ《行ってらっしゃいもおかえりなさいも直接言えずに》は、まさにジンホとフイ(2021年2月18日)の入隊に対する「行ってらっしゃい」と、イェナンの活動復帰に対する「おかえりなさい」であろう。

 1番Bメロでは《白い花咲いた/ピンク色に染まったあの記念日》と白とピンクの衣装で出演した音楽番組で「Daisy」がグループに初の1位をもたらしたことを祝福する。

 

 続いて2番Aメロ《きっともうすぐだ/さよならじゃなくっておかえりなさいってお祝いできる日は》ではジンホの除隊を見据えている。また、そのときには状況がよくなっていてほしいという願いが込められている。

 2番Bメロ《火花が咲いた/雪降る日に見せた君の涙が濁らないように》ではオンラインライブ『WE L:VE』について触れている。その日韓国で初雪が降ったこと、そしてその日に披露された"火花"を意味する新曲「Eternal Flame」を指している。更にサビでは《君の驚く顔が見たくて》と、その日披露された「Nostalgia」においてサプライズでファンがペンライトを振っている映像が映し出されたことについて言及している。

 

 次の瞬間、PENTAGONへの"FAN"ソングから愛しいBITCHたちとの"FUN"ソングに切り替わる。2番サビ終わりの、手拍子が際立つ4小節。筆者はここで我慢できず、遂に泣いてしまった。この曲のこの4小節は"手拍子をすること"が定番となるほど活動を続けた未来、愛しいBITCHたちが観客として集まってくれているホームでの公演で、アンコールとしてこの曲を披露しているUKI EYEは、白シャツとジーンズというシンプルな衣装で、目に涙をためながら観客たちの手拍子を感慨深げに眺めているーーそんな光景がふと浮かんでしまって、耐えられなかった。UKI EYEもBITCHたちも、そこに集うまで、きっといろいろなことがあったはず。それを乗り越えて今ここでピースフルな空間を作り出しているという想像上の光景が、あまりにも美しかった。

 UKI EYEは《宇宙が咲いた》とUNIVERSE/BITCHどちらとも捉えられるフレーズで再び歌い始める。そして全員の個性や人生がカラフルに光り輝くように、ひとりひとりをファルセットのロングトーンで祝福する。そこで楽器が歌メロの主旋律を奏でるのが、まるでそれぞれの人生の走馬灯のようで、筆者はここでまた泣いてしまった。

 ここからは怒涛のラストサビ。PENTAGONの「SHINE」よろしく、キラキラした単語のオンパレードで全員と人生最高の時間を過ごす。《永遠にハピネスであろう》の部分で響く音は、まるで宇宙船が出発するカウントダウンのよう。高まったUKI EYEはアウトロでまたファルセットのロングトーンを繰り出し、あまりのことに笑ってしまい「最高」と笑ってステージを終える。

 

名脇役に花束を (Give Me A Bouquet) [album ver.]

 この曲が始まることで、UKI EYEは「最高」という言葉を最後にいなくなってしまったことが明らかになる。身体がなくなって、この世に残ったものが自分の歌声だけになった世界で、愛しいBITCHひとりひとりが再生ボタンを押したときだけ、UKI EYEはBITCHたちの隣に現れるという曲だ。

 7年前の原曲と比べて、キーも上がっていればクオリティも格段に上がっている。UKI EYEがこの曲を大切にしていることが伝わってくるし、まるで今のUKI EYEが7年前のUKI EYEに《あなたは大丈夫》と歌っているようにも聞こえて、葬列の曲にも関わらず、『C'est La Vie』という物語のフィナーレを飾るにはこれ以上の曲はないと感じる。

 

Utopia

 Wikipediaによると、ユートピアは「人工的で、規則正しく、滞ることがなく、徹頭徹尾「合理的」な場所である」と定義づけられている。UKI EYEはインタビューにおいて天国的な場所と発言しているが、これは"おかしみ"を一切感じないものが存在しない世界を指しているのかもしれない。そして輪廻転生を意識してキーを合わせたという発言通り、ロ長調のこの曲から半音下がって「素晴らしきこの人生」に繋がるのが、天国的な場所から現実世界に引き戻される感じをよく表していると思う。

 

おわりに

 ここまでいちリスナーとしての感想を述べてきたが、ここまで読んでくれた方には是非一聴していただきたい名盤だ。UKI EYE曰く10億回再生を目指しているそうなので、Please #StreamCestLaVie.

 

 

 過去の作品については以下をご参照ください。

 

bitchvoguejp.hatenablog.com

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2021/02/08